そこで嘉助は、一生懸命それを跡けて行きました。ところ
がその路のようなものは、まだ百歩も歩かないうちに、おと
こえしや、すてきに背の高い薊の中で、二つにも三つにも分
れてしまって、どれがどれやら一向にわからなくなってしま
いました。嘉助はおういと叫びました。
おうとどこかで三郎が叫んでいるようです。
宮沢賢治「風の又三郎」より |
みんなははじめてがやがや声をたててその教室の中の変な子を指さしました。一郎はしばらくそっちを見ていましたが、やがて鞄をしっかりかかえて、さっさと窓の下へ行きました。 みんなもすっかり元気になってついて行きました。 「だれだ、時間にならないに教室へはいってるのは。」一郎は窓へはいのぼって教室の中へ顔をつき出して言いました。 「お天気のいい時教室さはいってるづど先生にうんとしからえるぞ。」窓の下の耕助が言いました。 「しからえでもおら知らないよ。」嘉助が言いました。 「早ぐ出はって来、出はって来。」一郎が言いました。けれどもそのこどもはきょろきょろ室の中やみんなのほうを見るばかりで、やっぱりちゃんとひざに手をおいて腰掛けにすわっていました。 ぜんたいその形からが実におかしいのでした。変てこなねずみいろのだぶだぶの上着を着て、白い半ずぼんをはいて、それに赤い革の半靴をはいていたのです。 それに顔といったらまるで熟したりんごのよう、ことに目はまん丸でまっくろなのでした。いっこう言葉が通じないようなので一郎も全く困ってしまいました。
引用:青空文庫
http://www.aozora.gr.jp/ |

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