その厳しい冬が過ぎますと、まず楊の芽が温和しく光り、砂漠には砂糖水のような
陽炎が徘徊いたしまする。
杏やすももの白い花が咲き、次いでは木立も草地もまっ青になり、もはや玉髄の雲の
峯が、四方の空を繞る頃となりました。
宮沢賢治「雁の童子」より |
私はしばらくその老人(ろうじん)
の、高い咽喉仏(のどぼとけ)の
ぎくぎく動(うご)くのを、見るともな
しに見ていました。何か話し掛(か
)けたいと思いましたが、どうもあ
んまり向(むこ)うが寂(しず)かな
ので、私は少しきゅうくつにも思い
ました。
けれども、ふと私は泉のうしろに
、小さな祠(ほこら)のあるのを見
付(みつ)けました。それは大へん
小さくて、地理学者や探険家(た
んけんか)ならばちょっと標本(ひ
ょうほん)に持(も)って行けそうな
ものではありましたがまだ全(ま
った)くあたらしく黄いろと赤のペ
ンキさえ塗(ぬ)られていかにも異
様(いよう)に思われ、その前には
、粗末(そまつ)ながら一本の幡(
はた)も立っていました。
引用:青空文庫
http://www.aozora.gr.jp/
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